オーセンティックAI代表取締役CEO、オープンファッション代表取締役CEO 上田徹氏
◾️豊島 デザイン企画室課長 加藤諭氏
テーマは「生成AIが加速させるファッション業界のDXの姿とは」。生成AI(人工知能)の活用が進む一方で、現場での定着にはまだ壁もある。
実際に導入を進めている2人に、今の状況と今後の展望を聞いた。
【 人間より賢い知能 】
「文章、画像、動画、音楽などを生成する精度は上がってきている。
ただ、それよりも現在焦点となっているのは人工的に作られたAIが人間よりも賢い知能を持った存在になる可能性が高まっていることだ」と上田氏はAIの進化の現状について話した。
豊島で営業支援ツールの開発、導入を進めている加藤氏は、「多くの企業やブランドがツールの導入を開始している。
特に現場では、デザイナーのクリエイティブを加速し、効率よく多様なデザインを検討できるようなニーズが高まっている」と話す。
一方、「生成AIが効果的に学習を行うための構造化されたデータを持っている企業は少なく、
自社の業務フローに対してうまく活用できていない企業も多いのでは」と指摘する。
【 効果も出ている 】
豊島では営業の現場から出た声をもとに、生成AIツールを開発してきた。
自社が持つパターンや仕様書など大量のデータを生かし、感性に基づいた柄を作る「バーチャルスタンダードAIパターン」、
平面の素材や柄の情報から立体的な商品画像を生成する「バーチャルスタンダードファブリックジーニー」、採寸作業を自動化する「バーチャルスタンダードAIメジャー」などを社内に展開している。現在は社内のみだが、将来的には外部提供も視野に入れている。
効果も出ているという。新しいデザインをすぐにビジュアル化できるようになり、サンプル数の削減を実現。デザイナーの業務効率化と廃棄の削減につなげている。
一方で、「仕様書からパターン生成まですべてAIでできる時代が来ると言われているが、それはまだ難しい」と課題感もある。
オーセンティックAIが提供する「メゾンAI」は、アパレル企業における120種類の職種定義をしたAIで構成されている。商品名や販売コメントの生成、SNS投稿文の作成、企画書の下書き、画像構成の指示など実務に即した支援を行う。デザイン、営業、企画、人事、経理など幅広い業務での活用が進んでいる。
ワールドグループでは27社で計1106人が利用している。1人当たり月に2~3時間の業務改善につながっていると試算する。
【 リスク対応も必要 】
今後について加藤氏は、「デザイナーのアイデア補助、バーチャルサンプルなど、これまでやってきたことがさらに加速していく」と話す。
「生成AIの利用には、著作権や法規制への対応も避けて通れない。そうしたリスクは、丁寧に時間をかけてやっていく必要がある」と慎重な姿勢も見せた。
上田氏は、「接客や営業のルーチン業務、たとえば資料作成などはAIによる自動化がポイントになる」とし、「人がより付加価値の高い作業に時間をかけられるようにする環境作りが必要」と話した。
また、最近は5~10人ほどのスモールチームでの活用にも注目しているという。「AIはレスポンスの速さと導入コストの低さが魅力。特に機動力や行動力のあるチームでは、使い方も柔軟で早い」としたうえで、「大企業でも、社内から切り離したスモールチームを作り、とりあえず始めていくことも一つの手ではないか」と締めくくった。